平成21年労働問題の最高裁判例(概要)       労働・SPOT情報&ニュース より 
 判決文については、判例検索システム(最高裁判例集)を参考にしてください。

(1) 土石流災害 
 平成8年,長野県小谷村の蒲原沢で14人が死亡した土石流災害。土石流の予見可能性はなかったと遺 
族敗訴の1,2審判決が確定した。(2009.2.17最高裁三小) 
(2) 居眠り運転のタンクローリーの起こした事故 
 平成18年,京滋バイパスで居眠り運転のタンクローリーが渋滞の車列に突っ込み9人が死傷した事故 
で、労働基準法違反(時間外労働)などの罪に問われた, 石油運送会社会長(66)に対する上告審。最 
高裁が、三六協定がある場合の法32条1項違反の成立について新しい見解に立つ判決。(2009.7.16最 
高裁一小) 
(3) 埼玉県ふじみ野市の市営プール事故 
 平成18年7月,埼玉県ふじみ野市の市営プールで,遊泳中の女児(当時7歳)が吸水口に吸い込まれて 
死亡した事故。 1,2審で禁固1年,執行猶予3年の判決(業務上過失致死罪)を受けた同市教委元体育 
課係長(48)の上告を棄却,1,2審判決が確定する。(2009.8.19最高裁一小) 
(4) ノースウエスト航空の客室乗務員配置転換事件 
 最高裁は、客室乗務員5人に対する,地上職(客室サービス課)への配転は権利の濫用で無効である 
とした東京高裁判決を支持し,同社の上告を棄却した。 (これにより、客室乗務員の地位確認と440万 
円の損害賠償が確定する)2009.9.8最高裁三小) 
(5) 飲酒運転に懲戒免職は「過酷」 
 平成19年5月,飲酒運転で懲戒免職処分を受けた兵庫県加西市の元課長(58)の処分取消請求訴訟の 
上告審で,最高裁は,市の上告を棄却する決定をした。 処分は社会通念上,著しく過酷で市は裁量権 
を乱用しているとして処分取消を命じた1,2審判決が確定する。(2009.9.18最高裁二小) 
(6) 米ジョージア州港湾局の日本代表部を解雇された女性の訴え 
 最高裁は、民間と同様の雇用関係にある場合の解雇について,無効確認をめぐる訴訟では,特段の事 
情がない限り裁判権は免除されないとした上で, 女性の請求を棄却した2審東京高裁判決を取消し, 
審理を高裁に差し戻した。(2009.10.16最高裁二小) 
(7) 総合商社「兼松」の男女賃金格差は違法                 
 一審は賃金格差が公序良俗に反するとまでは言えないとしたが、原審の東京高裁は,6人中4人に対 
する差別を認めて計約7200万円の支払いを命じていた。 最高裁判決によってこれが確定する。(2009. 
10.20最高裁三小) 
(8) 小学校養護教諭の自殺は公務災害                
 小学校で養護教諭を務めた女性(当時48歳)が2000年に自殺したのは,過重な労働でうつ病になった 
のが原因として,基金県支部の上告を棄却した。 これにより,請求を棄却した1審判決を取り消し公務 
災害と認定した原審判決が確定する。(2009.10.27最高裁三小) 
(9) 労災年金受給権と自賠責72条1項による損害のてん補(調整) 
 被害者が労災障害年金の受給権を有する場合において、政府が自賠責72条1項により填補すべき損 
害額は、支給を受けることが確定した年金の額を控除するのでは 
 なく、当該受給権に基づき被害者が支給を受けることになる将来の給付分も含めた年金の額を控除し 
てこれを算定すべきである。(2009.12.17最高裁一小判決) 
(10) 管理監督者と深夜割増賃金の請求権 
 労働基準法第41条2号のいわゆる管理監督者に該当する労働者であっても、労基法第37条3項に基づ 
く深夜割増賃金の請求をすることができる。 (2009.12.18最高裁二小判決) 
(11) 株主総会決議のないまま取締役に支給した退職金の返還 取締役を退任し退職金支払いがあっ 
た後、1年近く経過した後で株主総会の議決がなかったとして退職金の返還を求めたのは信義則に反し 
権利の乱用として 許されない。(破棄、差戻し)(2009.12.18最高裁二小判決) 
(12) 偽装請負(暗然のうちに雇用契約が成立するものでもない) 
 注文者が請負人の労働者に対して直接具体的な指揮命令を行うなど業務請負を装う労働形態は、違 
法な偽装請負に当たるが、 注文者が採用や給与額の決定に関与しておらず、暗黙の雇用契約が成立 
していたとまでは評価できない。(2009.12.18最高裁二小判決)  
 
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